「人材育成」と聞くと、先輩や上司がマンツーマンで行うイメージがありますが、皆さんもご存知のように先輩や上司だからと言って、誰もが育成に長けているという訳ではありません。育成担当者が経験豊富で、スキルや精神面においてもリードできる方であれば最高ですが、人員配置や経験などを踏まえて選任した方が初めて後輩を持つケースや、指導そのものが嫌い、苦手と思っている方も少なくありません。こうした状況から、スムーズに育成が進むようにと、育成経験者に依頼が集まることはないでしょうか。慣れた方に頼むことでお互いの安心感はありますが、育成経験者と未経験者の経験差が大きくなり、依頼される経験者からすると、定着かつ育成が望まれる中で失敗できないというストレスを感じている方も多いようです。
初めて人に教える時に不安は付きものですが、これを経験し、育て上げることで、スキル以外の面で育成担当者が大きく成長します。仮に個人としてのスキルがプロフェッショナルであっても、後進の育成では上手に指示や説明ができない先輩、人のミスを容認できない上司が多くなってしまっては、組織の未来は先細りとなります。皆さんの職場では、安心して育成を任せられるメンバーが、一人に集中することなく複数育ってきているでしょうか?
育成というと、新人の定着や成長にスポットライトが当たりがちですが、このように育成担当者を複数育てることは、会社からすると新人の成長以上に大きな価値でもあります。そこで育成未経験者を育てる際に気をつけたいポイントがあります。それは順番が巡ってきての役割、責任のような「義務」として伝えるのか、本人や組織を含めて将来を見据えた希望としての「期待」と伝えるのか。同じ育成でも、伝え方によって全く違う意味となります。人材不足が叫ばれる中、今を補う育成もあると思いますが、義務的な育成担当ではなく、今後への期待を込めて育成者を育成する意味を伝えていきたいものです。(代表取締役 高橋智仁)