新しく人材を採用したあと、すぐに辞めてしまうという結果にお困りの採用担当者様も多いのではないでしょうか?
そんな悩みをお持ちの採用担当者様には、トライアル雇用での採用がおすすめです。
本記事では採用難でお困りの企業様向けに、トライアル雇用とはなにか、利用するメリット・デメリットを紹介します。
また、トライアル雇用を採用した場合に申請できる、助成金の申請手順も紹介いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
トライアル雇用とは?
トライアル雇用とは、企業が求職者に対して決められた期間で試験的に雇用する制度のことです。
ハローワークや厚生労働省が主体となって推進している制度であり、就業経験の不足や長期間のブランクなどの理由で再就職が困難となった方への救済措置でもあります。
ただし、すべての求職者が対象となるわけではなく、一定の条件を満たした方のみが対象となるため、注意しましょう。
トライアル雇用は、一定期間の雇用をとおして企業と求職者のすれ違いを防ぐことを目的としています。
企業は決められた期間のなかで、求職者の適性や能力が会社に合っているのかどうかを見極めます。
一方で、求職者も期間中に新しいスキルを身につけることや、業務内容が自分に合っているのかどうかを見極めることが可能です。
適性や能力が会社に合っていると判断した場合には、お互いが合意をしたうえで一般社員へと契約を移行することが認められています。
対象者が一定の条件を満たしていれば、企業が助成金を申請できることも大きな特徴です。
試用期間との違い
一定期間の雇用となるトライアル雇用は、よく試用期間と一緒のものではないかと混同されがちですが、それぞれには明確な違いがあります。
主な違いを、以下の表にまとめました。
トライアル雇用 | 試用期間 | |
企業による採用の義務 | なし | あり |
任期満了後の解雇手続き | 単純 | 複雑 |
ハローワークや厚生労働省 | かかわっている | かかわっていない |
たとえば、トライアル雇用の契約期間が満了した場合、企業には対象者を一般社員として本採用をするという義務はありません。
そのため、企業が期間満了後に一般社員として契約を継続しないと判断した場合には、求職者は本採用されずに期間満了を迎えます。
試用期間の場合には、採用の段階で一般社員として採用をしているため、期間を満了しても必然的に一般社員として採用をし続けなければなりません。
トライアル雇用を利用する立場別のメリット
トライアル雇用を利用すると、企業と求職者それぞれにメリットがあります。
主なメリットを、以下の表にまとめました。
企業 | 求職者 |
すれ違いを減らせる | スキルを気にせずに応募がしやすい |
助成金を活用できる | 企業の雰囲気や業務を体験できる |
契約の解除が簡単にできる | 本採用につなげやすい |
企業と求職者に分けて、それぞれのメリットを詳しく解説します。
企業が得られるメリット
企業がトライアル雇用をすることで得られるメリットは、求職者とのすれ違いを防ぐことが出来る点です。
数か月間という短い期間でも求職者にお試しで働いてもらうことで、面接だけでは伝わらない求職者の内面を知ることができます。
求職者の適性を見極めたあとに、一般社員で契約を継続するのかを3か月後に判断できるので、通常の採用で起こるミスマッチングが減らせるでしょう。
採用時のすれ違いを減らせれば、採用担当者の労力や採用に必要なコストも抑えられます。
また、求職者との契約の解除が簡単にできることもメリットの1つです。
契約を解除する場合には、求職者に対して30日以上前までに「雇止め予告通知書」を渡したうえで、期間の満了とともに契約終了となる旨を伝えます。
その後、ハローワークに「結果報告書兼支給申請書」を提出すれば手続きは完了です。
トライアル雇用では、条件によって国から助成金が支給されることがあるので、新たな人材採用や育成の費用に充てられます。
求職者が得られるメリット
トライアル雇用は原則3か月間の雇用であるため、通常の就職活動よりも採用のハードルが低いです。
そのため、通常の就職活動よりもスキルを気にせずに応募ができることもメリットの1つです。
企業と同様に、求職者も職場の雰囲気や業務内容が自分に合っているかを、実際に働いたうえで判断したいと考えています。
いきなり本採用になってしまうと、働き始めたあとに「こんなはずじゃなかった」「思っていたのと違う」という気持ちから、早期離職につながるリスクが高まります。
気になる企業の雰囲気や業務内容をあらかじめ把握しておくことが出来るのは、求職者にとっては大きなメリットだといえるでしょう。
トライアル雇用期間の業務内容に問題がなく、会社にも合っていると企業に判断された場合には、お互いが同意をしたうえで一般社員として契約が継続します。
このように、通常の就職活動に比べて、本採用の一般社員へとつながる確率が高いこともメリットの1つです。
トライアル雇用を利用する立場別のデメリット
さまざまなメリットがあるトライアル雇用ですが、当然デメリットもあります。
主なデメリットは以下のとおりです。
企業 | 求職者 |
助成金を受け取る手順に手間がかかる | 本採用されない場合に職務経歴が残る |
人材教育に時間がかかる | 1つの企業にしか応募できない |
メリットと同様に、企業と求職者に分けてそれぞれのデメリットを詳しく解説します。
企業のデメリット
企業がトライアル雇用を採用した場合には、助成金が支給されるというメリットがある一方、助成金を受け取るための申請手続きに手間がかかるというデメリットもあります。
助成金の申請は、トライアル雇用を開始してから2週間以内に、雇用契約内容が記載されている書類と一緒に実施計画書をハローワークへ提出します。
その後、雇用が終了した翌日から2か月以内に、助成金の支給申請書をハローワークか労働局に提出すれば、後日助成金の支給がされるという流れです。
段階に応じて書類の準備や提出が必要になるため、あらかじめスケジュールの調整や確認をしなければなりません。
また、トライアル雇用に応募をする求職者は未経験の人が多いため、人材教育に時間がかかることもデメリットの1つです。
求職者のデメリット
求職者のデメリットは、トライアル雇用で3か月間業務を行っても、一般社員として本採用がされない可能性がある点です。
もし、3か月で契約終了となった場合には職務経歴が1つ増えます。
新たに就職活動を行う際に「3か月で契約期間満了」という職務経歴がつき、常時雇用に至らなかったという評価として不利に働くこともあります。
また、トライアル雇用での応募を検討する場合、基本的に1つの企業にしか応募ができません。
一般的な就職活動とは異なり、複数の企業に応募できないためどの企業に応募をするのかを慎重に選ぶことが重要です。
トライアル雇用助成金とは?
トライアル雇用助成金には「一般トライアルコース」「障がい者トライアルコース」の2種類があります。
それぞれ、雇用する求職者のタイプによってコースが分けられており、雇用期間や支給額が異なるため、どのような違いがあるのかをあらかじめ確認しておきましょう。
ここからは、2つのコースの特徴を詳しく紹介します。
なお、どちらのコースでも”新型コロナウイルスの影響で休業する場合には、トライアル雇用期間を変更できる”という特例があります。
一般トライアルコース
一般トライアルコースには対象者となるための条件があり、以下の条件のいずれかに該当していれば支給対象者であると判断されます。
- 現在ニートやフリーター等で、55歳未満の人
- 2回以上の離職や転職を、過去2年以内で繰り返している
- 離職中の期間が1年を超えている
- 特定の理由で離職したあと、安定した職業に1年以上就いていない
- 就職の援助を行う場合に、特別な配慮が必要である
上記は、2022年の段階で厚生労働省より発表されている条件であり、いずれかに該当する求職者が、一般トライアルコースの対象です。
特別な配慮が必要な例としては、生活保護受給者やホームレス、母子家庭の母や父子家庭の父などが挙げられます。
一般トライアルコースでの支給額は、対象者1人につき月額4万円であり最長3か月間支給されます。
ただし、対象者が母子家庭の母、もしくは父子家庭の父の場合は、1人につき月額5万円に支給額があがるので、事前に確認しておきましょう。
さらに詳しい情報を知りたい方は、厚生労働省のWebサイトを確認してみてください。
障がい者トライアルコースも、一般トライアルコースと同様に該当する対象者の条件があります。
主な該当条件は以下のとおりです。
- 就労経験のない職業への就職を、希望している
- 2回以上の離職や転職を、過去2年以内で繰り返している
- 離職期間が6か月以上である
上記は、2022年の段階での該当条件であり、原則3か月間の試行雇用を行うものです。
ただし、2021年4月より、障がい者がテレワークによる勤務を行う場合は、雇用期間を最長6か月まで延長できるように制度が拡充されています。
障がい者トライアルコースは、「障害者の雇用の促進等に関する法律 第2条1号」によって定められた障がい者が対象です。
特別な配慮が必要な例としては、生活保護受給者やホームレス、母子家庭の母や父子家庭の父などが挙げられます。
基本的に、対象者1人につき月額最大4万円が支給されますが、精神障がい者を雇用した場合は月額最大8万円が支給されます。
助成金の申請手順
トライアル雇用による助成金の申請をしたい場合には、4つの手順に沿って手続きを進めます。
手続きに不足がないように、必要な手順を確認しておきましょう。
ハローワークへ求人を出す
助成金を申請するためには、まずハローワークへトライアル雇用の求人を出すことから始めます。
ハローワークへ求人票を提出したうえで、労働条件も提出する必要があるため記載する項目をあらかじめ確認しましょう。
もし、同時に一般求人も行いたい場合には併用求人となるため、ハローワークの担当者へ直接確認してみてください。
また、記載する項目が分からない場合には、ハローワークの担当者と相談しながら求人票を記入することも可能です。
その際、どの業務で利用をするのか、労働条件をどうするのかなどを決めておけると不明点も合わせて確認できるためおすすめです。
面接を行い採用する
条件に合った求職者の応募があれば、ハローワークから紹介があります。
求職者の情報を書類で確認したあとは、必ず面接を行いましょう。
求人に対する面接を行ったうえで、採用する場合には雇用保険への加入手続きをしなければなりません。
雇用保険への加入には別途書類が必要となるので、詳しい手続きは近くのハローワークに
段階ごとにハローワークへ書類を提出する
面接をしたうえで採用する対象者が決まれば、速やかに「トライアル雇用実施計画書」の作成を行い、雇用から2週間以内にハローワークに提出します。
トライアル雇用実施計画書には、企業の詳細や対象者の情報などを記載します。
また、トライアル雇用の期間が終了したら、終了日の翌日から2か月以内に「トライアル雇用結果報告書」「トライアル雇用奨励金支給申請」をハローワークへ提出しましょう。
これらの書類は、求職者が一般社員へと移行したのかどうかだけではなく、助成金の支給を受けるための条件を満たしているかどうかを記載する書類です。
内容に誤りがないかよく確認してから、提出しましょう。
助成金の支給を確認する
トライアル雇用期間を終えたあとに提出する「トライアル雇用結果報告書」「トライアル雇用奨励金支給申請」の内容によって、審査が行われます。
審査が終了すれば、対象者によって異なる助成金が一括で振り込まれるため、間違いがないか確認しましょう。
助成金が減額される2つのケース
トライアル雇用助成金には、減額されるケースが主に2つあります。
支給された助成金が「想定していた金額よりも低い」という結果にならないように、それぞれのケースを確認しておきましょう。
雇用期間が短い
トライアル雇用の場合、原則3か月の雇用という期限が設定されています。
しかし、途中で対象者が離職をしたり一般社員に切り替えたりした場合には、助成金が減額される対象になるため注意しましょう。
対象者が離職をした際の理由としては、以下の内容に該当する場合が減額対象です。
- 対象者の故意的な過失がある場合
- 本人の都合による退職や死亡の場合
- 企業の事情で事業が継続不能となり解雇をした場合
もし、対象者が失踪していた場合にははっきりとした離職日が不明になるため、給与を支払った最終日までの期間で計算されます。
雇用期間中に休暇や休業をした
トライアル雇用期間中に対象者が休暇や休業をした場合には、厚生労働省が定めている計算式によって計算をします。
計算方法は以下のとおりです。
上記の計算方法で出た数値が75%以上である場合には、助成金は全額支給されますが75%未満であった場合には数値に応じて支給額が異なります。
75%未満の支給額は、以下の表を参考に確認してみてください。
引用:厚生労働省 Ⅱ・Ⅲ 障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース
トライアル雇用は企業と求職者のすれ違いを防げるというメリットがある
トライアル雇用とは、原則3か月の期間で求職者を試験的に雇用する制度のことです。
企業と求職者のすれ違いを防げるというメリットがある一方、企業は教育体制を整えなければならないというデメリットがあります。
また、求職者は事前に仕事内容を体験できるというメリットがありますが、一般社員としての雇用が確約されていない点はデメリットだといえるでしょう。
企業と求職者どちらにおいても、後悔しないようにトライアル雇用を詳しく理解しておくことが大切です。
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