近年、「ブラック企業」や「働き方改革」といったキーワードが世間を賑わせておりますが、人材育成に奮闘している方々からは、現代ならではの悩みや苦労が聞こえてきます。「どこまで言って良いものか?」「強く伝えることで辞めてしまわないだろうか?」
頑張って働くことを揶揄するような風潮が強まる中、育成に対して及び腰になるのも解かる気がします。しかし、顔色を伺い過ぎて当たり障りのないことしか伝えられない過度なメンバー保護は、若年層をはじめとする今後の労働市場を骨抜きにしてしまうのではないか?と危惧する声が挙がっているのも事実です。
例えば、仕事上でメンバーのミスや違和感に気付いた際に関係性ばかりを優先して必要な指導もしないまま、先輩や上司のサポートを得てその場を乗り切ってしまったとしたら?その後も似た場面が訪れるたびに、メンバーは戸惑うことになります。乗り越える術を知らないメンバーは何度も悩み、苦しみ、場合によっては「退職」という道を選択することもあるのではないでしょうか。
このように「強く言って気分を損ねてはならない」という恐れや優しさがメンバーの自立を妨げ、結果として辛い思いをさせているかもしれないという危険性に、指導的立場である私たちが、しっかりと目を向ける必要があると感じています。忙しい職場ほど、こうした潜在的な課題に目を向けることに葛藤はあると思いますが、今日の平穏より、メンバーの成長を願う私たちの熱量が今、試されているのではないでしょうか。
今、どの職場でも人材育成は重要なテーマになっています。当然、相手によっては「伝える勇気」ではなく、「待つ勇気」が問われる場合もありますが、いずれにしてもメンバーを思う熱量が、時代が変われど無くてはならない「人材育成の種」だと感じます。(代表取締役 高橋智仁)